今春の高校入試の概況(2)(都立編②)

都立一般試験

 ①出願傾向
 一般試験の最終応募倍率は1.37倍、前年度と全く同じで低倍率でした。都立離れの傾向は今年も続いているようです。
 男女別募集の普通科男子の倍率は1.45倍で前年度(1.46倍)より0.01ポイントダウン、女子は1.46倍で前年度(同1.46倍)と同倍率でした。コース制、単位制普通科はいずれも倍率ダウンで、普通科全体では1.44倍、前年度(1.45倍)からわずかに下がりました。全体的に受験生が安全志向になっており、男女ともに高学力層の高校の志望者が減少して、その分偏差値40~50ぐらいの高校が増加しています。さらにその下の層では通信制への流れも見られます。中学進学前後に一斉休校となった今年度の受験生たちは、中学2年進級前後に一斉休校だった前年度の受験生たちよりも自らの学力に対する不安が大きく、慎重な志望校選びになったのではないでしょうか。
 専門学科では商業科や農業科など、倍率アップとなる学科も見られたものの、専門学科の募集人員の3分の1を占める工業科が前年度の0.85倍から0.74倍とダウンし、専門学科全体としても前年度の1.04倍から1.01倍へとダウンしました。その一方、総合学科は過去最低倍率だった前々年度から2年連続の倍率アップ、1.2倍台となるのは5年ぶりです。専門学科から総合学科へと受験生が流れた形です。
 また、昼間定時制の1.05倍は前年度(1.02倍)からややアップ、チャレンジスクールは1.42倍で前年度(1.22倍)から大幅なアップとなりました。

②英語スピーキングテスト(ESAT-J)
 中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)が初めて実施されました。7割以上の受験者がC以上の評価でした。(評価は、A:80~100点、B:65~79点、C:50~64点、D:35~49点、E:1~34点、F:0点です。)平均スコアは60.5点、前年度に行われたプレテストから6.8点上昇しました。都立高一般入試においてスピーキングテストの結果が点数化されることになり、受験生たちがテスト対策を行った結果、平均スコアが上がったものと考えられます。実際、当塾でも数回にわたって対策授業を行いましたが、回を重ねるごとに生徒たちは要領をつかんでいき、正答率もどんどん上がっていました。

③高倍率になった高校
 男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男子は今年度も日比谷で2.59倍、女子は広尾で2.49倍でした。男子は次いで目黒2.29倍、調布南2.22倍、広尾2.06倍、府中が2.03倍、女子は鷺宮2.48倍、竹早2.20倍、豊多摩2.17倍、前年度トップの神代は2.13倍でした。総合学科のトップは前年度と同じく晴海総合で1.83倍、次いで王子総合が1.61倍となりました。

④一般合格者の状況
 全日制全体の合格率は74.0%(前年度73.6%)、不合格者数は前年度(10,262人)より26人増えて10,288人と多くの受験生が涙を呑んでいます。
 男女別募集の男子の実質倍率は1.42倍、合格率70.4%(前年度1.39倍、71.7%)、女子は1.37倍、73.3%(同1.40倍、71.3%)で男女の合格率が逆転しました。合格者数でも女子の割合が増えています。このような結果になったのは、男女別定員緩和措置の割合が10%から20%になったことによって合格者中の女子の割合が上がった学校が多かったためです。
 男女別普通科の合格率を学力別に見ると、最も合格率が低いのは男女ともに偏差値50~54の層でした。前年度は55~59の層の合格率が最も低かったので、今年度は激戦となった層がひとつ下がった形です。全体的に安全志向になっていることがここからもうかがえます。

⑤男女合同定員への移行
 都教委は「令和6年度入学者選抜以降、早期に男女合同選抜へ移行することを目指す」としています。仮に都立高普通科において男女合同定員による入試が行われた場合、推薦入試には大きな影響が出ると思われます。すでに男女合同定員になっている単位制普通科高校では、推薦入試の合格者の男女比はおよそ2:8で、女子の合格者数が男子を上回っています。これは女子の持っている内申点が総じて高いためです。男女別募集を行っていた普通科が男女合同定員の推薦入試になれば、ほとんどの学校において女子の合格者数が増えることは確実です。一般入試は高い内申点を持った女子が抜けた形で行われることになり、応募者、および合格者の男女比に影響を及ぼす可能性があります。